Gartner Research

CIOおよびテクノロジ・エグゼクティブが活用すべきGartnerのエッセンシャル・フレームワーク

Published: 06 July 2022

Summary

Gartnerは最も重要なフレームワークを、20の説明責任から成る、CIOにとって重要な4つの領域にまとめている。こうしたGartnerのエッセンシャル・フレームワークによって、CIOおよびテクノロジ・エグゼクティブは、情報とテクノロジを活用してITの地位を改善し、企業のパフォーマンスと価値を向上させることができる。

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要約

企業が市場競争に勝ち、公的機関が組織の使命を果たす上で情報およびテクノロジ (I&T) は重要になっており、CIO (およびテクノロジ・エグゼクティブ) (備考1参照) には、図1に示す4つの重要な領域にわたる自らの説明責任を包括的に捉えることが求められているCIOは日常的に緊急事態に直面しているため、最も用心深い有能なCIOであっても、「他より緊急性が低いが重要かもしれない領域」を見逃しがちである

本リサーチノートは、Gartnerの最も重要なフレームワークである「エッセンシャル・フレームワーク」をまとめたものである。Gartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、CIOとそのチームは、注力すべき4つの主要な領域を俯瞰し、そうした領域における20の説明責任 (図2参照) を理解できるようになる。連のフレームワークは、CIOをはじめとするITリーダーが取り組みのバランスを見直し、戦略の実行に対するI&Tのインパクトのほか、企業のパフォーマンスを向上させて、CIOの役割の価値を高めるために役立つ。本リサーチノートの使い方を説明した動画については、を参照されたい。

図1. CIOおよびテクノロジ・エグゼクティブにとって重要な4つの領域

本リサーチノートの各セクションでは、CIOおよびテクノロジ・エグゼクティブにとって重要な領域を1つずつ掘り下げ、当該領域の説明責任に沿ってまとめられたGartnerのエッセンシャル・フレームワーク・ツールキットをダウンロードできる。各ツールキットには、複数のトピックにわたる統合的な知見を提供する、厳選された一連のフレームワークが含まれている。また、Gartnerが提供する他の多くのフレームワークやツールキットを調査するための出発点として、本リサーチノートを活用することもできる。

掘り下げたい説明責任を選び、そのセクションを参照して、関連するGartnerフレームワークを特定する (図2参照)。その上で、ツールキットをダウンロードしてフレームワークの詳細と関連リサーチを確認し、フレームワークを早期に修得する。

特に「企業の優先課題に影響を及ぼす」の説明責任の一部では、CIOおよびテクノロジ・エグゼクティブは影響力を持っていて、成果の責任を単独で負ってはいない。例えば、CIOは企業戦略に影響を与え、さらには推進するかもしれないが、企業戦略の策定や実行を単独で担うことはない。CIOは、他の上級リーダーのパートナーとして、企業全体の戦略とその実行を調整する役割を果たす。

こうした重要な領域は、ITの組織図や役割一覧を反映したものではない。中には、多くの説明責任を負うことから可視化されていないITの役割や機能もある。例えば、エンタプライズ・アーキテクチャ (EA) はイノベーションを実施し、戦略を策定・実行するための基盤である。EAのためのエッセンシャル・フレームワークは、説明責任の多くに含まれている。

図2. 20の説明責任から成る、CIOにとって重要な4つの領域

CIOにとって重要な領域:企業の優先課題に影響を及ぼす

CIOはビジネス幹部として、まず企業レベルで物事に注力すべきである。先進的なCIOは、CEOや取締役などのビジネス・リーダーと連携して、自社のために持続可能で適応力のある戦略的なビジョンを形成している。企業がデジタル・ビジネスへと転換すると、I&Tは、ビジネスモデル、戦略、オペレーティング・モデルのあらゆる側面に統合され、業務能力を通じて、企業の戦略的な大志を実現する (図3参照)。戦略の実行を成功させるには、CIOを含むビジネス幹部の間における緊密なコラボレーションとパートナーシップが必要である。

図3. 業務能力はビジネスモデル、ビジネス戦略、オペレーティング・モデルを結び付ける

業務能力は、ビジネスモデル、ビジネス戦略、企業のオペレーティング・モデルを結び付けるものである。ビジネスモデルは、必要な業務能力を定義する。戦略は、企業が市場競争に勝てるよう、あるいは公的機関が組織の使命を果たせるよう、業務能力を結束させる。企業のオペレーティング・モデルは、業務能力を継続的に運用する。しかし、これがすべてではない。一部の業務能力は、ビジネスを差別化するものとして収益化され、ビジネスモデルと戦略へのインプットとして利用される。テクノロジの変化やテクノロジが企業に及ぼす影響が大きく、そのペースも速まっていることから、CIOは企業のビジネス幹部として、ますます戦略的かつ重大な役割を果たすようになっている。

世界の動きは速い。I&Tを組織全体に定着させなければ、企業はその結末に苦慮することになる。例えば、戦略や使命の遂行の遅れ、競争力の低下、コスト高でありながら実現される価値が低いということにつながる。結果として、すべてのCIOは、以下に示す7つの説明責任に時間の大半を投じて企業に最大の効果をもたらす必要に迫られる。時間の大部分を「企業の優先課題に影響を及ぼす」に費やす場合は、CIOが強力なリーダーシップを発揮し、他の3つの領域において実行に対する説明責任のほとんどを果たすことが求められる。

この説明責任の領域は、オペレーション重視からビジネス指向への転換を求められているCIOにとっては、最も難しいものとなる可能性がある。この説明責任には、CIOが企業戦略、ビジネスモデル、オペレーティング・モデルの関係を理解して舵取りしたり、1つのフレームワークへの変更が他に与える影響をシミュレーションしたりするために必要なことの詳細を提供するフレームワークが含まれる。成功する組織は、方向転換と円滑な実行を実現するオペレーティング・モデルと、急速に変化する市場や顧客、テクノロジに適応可能な戦略を備えている。

CEOは、コンポーザビリティとレジリエン、比較的反脆弱性 (アンチフラジリティ) のある状態 (Comparative Antifragility:混乱の中でも競合他社より優れたパフォーマンスを上げられる態勢にあることを指す) を実現する可能性と戦略的選択を明確に示すことをチームのI&Tリーダーに求めている。また、企業が買収を考えている場合、CIOは合併・買収 (M&A) 取引前の調査義務 (デュー・デリジェンス) でも取引後の統合でも重大な役割を果たす。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 企業のデジタル化への大志を決める。

  • ビジネスモデルの変更を評価する。

  • デジタル・エコシステムの機会と脅威を説明する。

  • 企業戦略にI&Tを統合する。

  • シナリオ・プランニングを通して戦略的に思考する。

  • 戦略の実行を成功に導く企業オペレーティング・モデルを設計する。

  • 戦略/実行に向けて業務能力モデリングを使用する。

  • バリュー・ストリームを使って顧客中心主義を推進する。

  • M&Aのデュー・デリジェンスを最適化する。

デジタル・プロダクト/サービスが開発され、これらを市場に投入し、プロダクト・マネジメント規律を大幅に変更することが企業には求められている。デジタル・プロダクト/サービスには、顧客の使用状況や効果をモニタリングする解析機能が組み込まれており、今後の変更に向けたプロダクト/サービス・ロードマップを作成できる。プロダクト/サービスは新しい特性や機能によって頻繁に更新される。プロダクト/ポートフォリオ・マネジメント規律を習得したCIOは、こうしたプロダクト/サービスを革新、開発、支援できるよう、I&Tリソースを全社的に調整している。

また、ビジネス目標との戦略的な整合を確保し、投資に優先順位を付け、戦略の実行を成功させるための方法として、プロダクト・マネジメント規律が (社内向けプロダクト・ポートフォリオを通じて) 社内全体に拡大される。プロダクト・マネジメントによってリソースを活用する説明責任者には、戦略的な主要パフォーマンス指標 (KPI) が段階的に割り当てられる。CIOは、I&T部門のほか、企業全体でプロダクト・マネジメントを展開する上でますます大きな役割を果たすようになっている。CIOは通常、デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォームのロードマップの変更に関する説明責任を負うほか、企業オペレーティング・モデルの変革に影響力を及ぼす。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 社内外のプロダクトにプロダクト・マネジメント規律を適用する。

  • プロダクト中心モデルを適用しているリーダー企業の事例から学ぶ。

マーケティング、セールス、顧客サービス、デジタル・コマースのチームは顧客/市民と最も密にコンタクトを取っているため、必然的に変化の最前線に立っている。したがって、変化に継続的に適応し、さらに俊敏な組織文化を創出しなければならない。こうしたチームは、顧客/市民エクスペリエンスの目標を達成するために、テクノロジや新しい働き方にさらに依存するようになる。顧客テクノロジは、CIOの時間やリソースを次第に奪っていくようになる。その結果、この領域はCIOに最大の機会をもたらす一方で、最大のリスクももたらす。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 強力な顧客/市民エクスペリエンスを創出する。

  • 大胆な顧客/市民エクスペリエンス戦略を取る。

事業会社のCIOは、デジタル・テクノロジを使って企業全体のオペレーショナル・エクセレンスを高めることができる。例えば、テクノロジによってオペレーションのコストや速度の面で競争力を強化できる。自動化された製造工場を新設したり、既存施設を刷新したりすることで、競合他社よりもコスト面で優位に立てる場合もある。先進的な企業は、ビジネス・ケイパビリティ・モデリングを使用して、ITとオペレーショナル・テクノロジ (OT) を統合できる可能性がある領域を特定している。これによって、コストを削減し、データの透明性とスピードを向上させている。

例えばCIOは、デジタル化が進む産業資産の保守をサポートし、そのパフォーマンスを最適化するという役割を果たせる。ただし、ITチームとOTチームが歴史的に分断されていることが、こうした進化を阻む可能性がある。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • ITとOTの間の垣根を取り払う。

  • IT/OTチームを統合してコラボレーションを促進し、人材を共有する。

CIOは、人事部門と連携してI&Tに関するエンタプライズ・コンピテンシとワークフォース育成を具現化する上で重要な役割を担っている。また、「従業員のデジタル・トランスフォーメーションに対するワークフォースの準備態勢」と定義される、企業のデジタル・デクステリティに関する要件に対応するのもCIOである。大半あるいはすべての従業員は、新たなテクノロジや働き方を採用して、自社のビジネスを進化させるよう行動できなければならない。例えば、短期サイクルで作業し、方向転換に素早く適応し、分野混成のフュージョン (融合) チーム (スクワッドやポッドとも呼ばれる) で協働する必要がある。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 企業の戦略的なワークフォース計画を立案する。

  • 将来の要件にも対応できるワークフォースを編成する。

  • デジタル戦略に合わせて人材を調整する。

  • 融合型のワークフォースを導入してレジリエンスを高める。

  • 従業員のデジタル・デクステリティを向上させ、デジタル・トランスフォーメーションと戦略の実行を加速する。

  • 未来の働き方を刷新する。

  • ビジネスとITのフュージョン・チームで業務を遂行することにより、戦略的な成果を実現する。

先進的なCIOは、企業全体でイノベーションを推進し、企業の幹部と連携しながらイノベーションの文化とプロセスを実現している。こうしたCIOは、執行委員会や取締役会と共に将来を見つめ、最新のトレンドやテクノロジ、それらが引き起こすディスラプションが自社の業界にどう影響するかを予測している。シナリオ・プランニングによって、企業戦略やビジネスモデルを変革するための情報を得ることができる。

CIOは、新しいエコシステムに迅速かつ容易に接続できる自社のテクノロジ・プラットフォームを準備して、ディスラプションがもたらす機会を生かせるようにすべきである。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 自社のイノベーション・ジャーニーをカスタマイズする。

  • イノベーションの成功率を高める。

  • アイデアの創出と評価においてデータとアナリティクス (D&A) を活用する。

  • トレンド予測 (Trendspotting) を使って機会を特定し、脅威を緩和する。

  • 実験を通じてイノベーションを推進する。

パンデミック後のデジタル時代では、戦略的なリスク・マネジメントが企業のレジリエンスとビジネス成果を高める上で極めて重要となる。これらはいずれも、I&Tによって決まる。新規テクノロジの採用が急速に進み、情報の活用が進んだ結果、I&Tはツールとしてだけでなく、プロダクトとしても機能している。リスク・マネジメントにおける機密性、完全性、可用性という従来の目標の範囲が広がり、中核的なビジネス目標として、プロダクト/サービスのデリバリにおけるプライバシー、安全性、信頼性を網羅するようになっている。これに加え、ビジネス・リーダーから現場スタッフに至るまで、全員がリスクに関する意思決定を行っている。このような傾向を受けて、リスクに関する意思決定の数や種類が増え、そのスピードが上がっている。

CIOとリスク・マネージャーは、全従業員によって支えられたリスク・ガバナンス・プロセスの策定に関する説明責任を負う。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 企業のリスク、価値、コストを最適化する。

  • ステークホルダーのリスク選好度を評価する。

  • 組織のレジリエンスを高める。

  • アンチフラジリティの先へと進む。

CIOにとって重要な領域:IT戦略を計画して実行する

CIOは、戦略計画の策定や実行に対する説明責任を負う。戦略計画では、18~24カ月の中期計画に重点を置き、実行を成功させるためにI&Tオペレーティング・モデルに加えるべき変更に関するロードマップを提供する (図4参照)。I&Tオペレーティング・モデルは、「IT戦略を計画して実行する」の主要なフレームワークの1つである。

図4. I&Tオペレーティング・モデルの相互に依存する構成要素

CIOは、ビジネス主導のITを含む、企業全体のI&Tを網羅した企業目標を達成するために、統合的なアプローチによってI&Tオペレーティング・モデルを設計する。I&Tオペレーティング・モデルの相互に依存する構成要素を図4に示す。これらの要素は、実行に向けて同期させる必要がある。例えば、デジタル・ビジネスに移行するためには、以下が必要である。

  • プロダクト・チームを主軸として、探索的な作業を行う。

  • 従業員の創造力と市場指向性を強化する。

  • 戦略的なKPIに照らしてパフォーマンスを測定する。

権力者が大多数のリソースを獲得する環境から、戦略への整合に注力する環境へとガバナンスは変化する。さらに、企業がI&Tから高い価値を得るようになるにつれ、CIOも自らの役割を進化させる。

CIOは、I&T戦略と戦略計画を策定して実行するために、本セクションに分類されたGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使用すべきである。この領域は、以下に示す4つの説明責任で構成される。

戦略はその実行によってのみ効果を発揮するが、実行の失敗例は後を絶たない。CIOは、この説明責任を果たすことで、戦略を首尾よく実行できる。ここに含まれるものは、戦略目標を達成するための戦略的プランニング、IT実行、進化するI&Tオペレーティング・モデル (組織モデルを含む) である。企業戦略を実行するために、I&Tオペレーティング・モデルでは、ビジネス主導のITを含む企業全体を網羅する。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • I&Tのためのオペレーティング・モデルを最適化する。

  • 企業のデジタル化への大志に合致するようI&Tオペレーティング・モデルを変革する。

  • 戦略的プランニングによって実行の成功率を高める。

  • 新たなI&Tオペレーティング・モデルの必要性をアピールする。

  • 適応型プログラム管理において手腕を発揮する。

  • 市民ITとグレーITの境界を明確にする。

CIOは、戦略の実行を成功させるために、希少な企業リソースに優先順位を付けるガバナンス・フレームワークと意思決定権を確立する。ガバナンスはますます複雑化している。なぜなら、テクノロジの多様化と急速な変化、I&Tリソースの連邦化、ITの厳格な統制によってビジネス主導のITが影響力を強め、ステークホルダーの範囲が広がっているからである。

従来型のガバナンスはヒエラルキー型の統制をベースとしていたが、デジタル世界ではリスクやビジネス要件に合わせて柔軟に変化しなければならない。統制が最も重要ならばシステムを遮断し、スピードと柔軟性が重要ならば制限を緩める。こうした環境では、EAとプログラム/ポートフォリオ管理の規律が極めて重要となる。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 適応型ガバナンスを適用する。

  • 連邦型企業における意思決定権を最適化する。

  • 意思決定を構造化する。

  • ポートフォリオ管理を再設計する。

  • 競合する投資提案に優先順位を付ける。

組織で業務を遂行するのは人であるため、人材は、オペレーティング・モデルの最重要要素であると考えられている場合が多い。オペレーティング・モデルの進化に合わせて、人材も進化させる必要がある。これは、最新のテクノロジやプラクティスにおいてリーダーシップやスキル、コンピテンシを有する人材を採用することを意味する場合もあれば、ワークフォースを育成してスキルとコンピテンシを継続的かつ動的に進化させ、新しいビジョンと戦略を実現することを意味する場合もある。

CIOは、競争力を増幅するために、新しく革新的な能力を持つ多能なITワークフォースを育成すべきである。I&Tオペレーティング・モデルを進化させるにつれて、文化的特性を再定義して発展させ、IT人材が顧客を重視し、実験を行い、早い段階で失敗してそこから学び、改めて試行することを奨励する必要がある。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 戦略的なITワークフォース計画を立案する。

  • IT従業員への価値提案を見直す。

  • I&Tオペレーティング・モデルに合わせて人材を調整する。

  • ビジネスとITのフュージョン・チームで業務を遂行する。

  • 優秀なEAチームに投資する。

  • 組織変革を主導する。

  • 変革の成功率を高める。

  • 組織文化を変革する上での障壁を克服する。

CIOが企業の優先課題や戦略に対する影響力を高めるにつれ、その地位と知名度はCレベルの経営幹部、場合によっては取締役会レベルに達する。先進的なCIOは、企業の優先課題の設定に不可欠である。その域に達するために、CIOは、自らのリーダーシップに継続的に磨きをかけなくてはならない。CIOはそれによって初めて、取締役やCEOなどの執行委員と同じレベルでビジネス戦略に関与できるようになる。

CIOは、デジタル・ビジネスに対する責任を果たすために、自らの役割や他のITリーダーの役割がどのように進化していくかを予測できなければならない

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • CIOとしての役割を進化させ、企業のデジタルの未来に向けて調整する。

  • パーソナル・ブランドに注力する。

  • 企業リーダーへとステップアップする。

  • CIOリーダーシップの5つの側面を適用する。

  • デジタル・リーダーの7つの特性を取り入れる。

  • デジタル・トランスフォーメーションを加速する。

CIOにとって重要な領域:テクノロジを活用する

CIOとITリーダーは、テクノロジを活用して戦略目標を達成することで、オペレーショナル・エクセレンスと競争力を高め、成長を促す。テクノロジは、プロダクト/サービスのイノベーション、ビジネスモデル、戦略のほか、ビジネス・プロセスの自動化や卓越したカスタマー・エクスペリエンスの実現などにおいて、主要な役割を果たす。

テクノロジの進化に合わせて、CIOは、ビジネスを強化し成長させるためのテクノロジ能力の範囲を調整する。先進的なCIOは、これを体系的に行うために、共有の能力基盤であるデジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォームを確立する (図5参照)。このプラットフォームには、ERPなどのITシステムや、顧客システム、モノのインターネット (IoT) システム、エコシステムが含まれる。これらのすべてが、アナリティクスとインテリジェンスを通じて結び付けられる。このプラットフォームは、イノベーションに利用できるリソースを増やすために、希少な人的リソースと財務リソースを最適化する。多くの企業がプラットフォーム・ビジネスに転換するために投資したり、新しい機会に対処するためにエコシステムのアライアンスを迅速に導入したりしているため、こうしたプラットフォームが競争力をもたらす場合もある。

図5. デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォーム

CIOは、テクノロジを企業全体で活用して戦略目標を達成するために、本セクションに分類されたGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使用すべきである。EAは、テクノロジに関するリーダーシップとテクノロジの利用において、重要な役割を果たす。この領域は、以下に示す5つの説明責任で構成される。

CIOは、I&TリーダーがEAを基盤としてアーキテクチャを開発し、デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォームを構築する計画を策定して、デジタル戦略を実現できるよう権限を付与する。この計画には、アプリケーション・アーキテクチャの近代化のほか、マルチエクスペリエンスをサポートするAPIとクラウド・ネイティブ・アプリケーションを使った統合が含まれる。つまり、アーキテクチャの面から、顧客と従業員のためにアプリケーション・エクスペリエンスを再定義して競争力を高めるアプローチである。企業は、組織のあらゆる側面を継続的に運営するために、アプリケーションに依存している。

絶えず変化するデジタル世界において、企業は、自社のアプリケーション・プラットフォームとエコシステム戦略を再考し、モノリシックなソリューションではなく、モジュール型のビジネス・ケイパビリティ・パッケージを実現しようとしている。Gartnerはこれを、「コンポーザブル・エンタプライズ」と呼んでいる。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • アプリケーション・アーキテクチャを進化させてコンポーザブル・エンタプライズを実現する。

  • Gartnerのデジタル・ビジネス・レイヤを活用して、デジタル・ビジネスの意図を伝達する (参照)。

  • デジタル・ビジネス・テクノロジ・プラットフォームを構築する。

  • デジタル・ビジネス・アプリケーションを見直す。

  • 実験を通じてイノベーションを推進する (プロトタイプの開発、パイロットの実施、実用最小限のプロダクト [MVP] の作成など)。

デジタル・ビジネスの成功は、ビジネスへの大志によって拡大するD&A戦略によって後押しされる。D&Aリーダーは、新たなビジネス価値を生む市場創造/市場差別化戦略へのD&Aの適用を推進している。

先進的なCIOは、D&Aを戦略とオペレーティング・モデルに組み込んでビジネス価値を最大化しつつ、実証されたプラクティスを採用してD&Aを社内外で活用している。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • D&Aの戦略とオペレーティング・モデルを策定する。

  • 人がどのように意思決定を下すかを理解し、モデル化する。

  • D&Aガバナンスの適応性を高める。

  • AIのユースケースを評価し、それらに優先順位を付ける。

  • データ・ドリブンな意思決定を向上させる。

CIOは、アプリケーション・ポートフォリオで起こっている変革、すなわちアプリケーション・ポートフォリオのガバナンスや開発、保守のほか、最も重要な点として統合方法を監督している。ウォーターフォール・プラクティスは、不確実性の高いデジタル環境で求められるスピードや俊敏性、イノベーションにより適した反復型の手法に取って代わられている。プロジェクト管理のアプローチは、プロダクト/プラットフォーム・マネジメントのアプローチへと道を譲っている。

ビジネス主導のITの拡大に伴い、CIOはガバナンスを再設計し、連邦型のガバナンスを実現するようになる。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • アプリケーション・ポートフォリオの適合性を評価する。

  • コンポーザブルERP/バリューチェーン/基幹システム戦略を導入する。

  • CRMアプリケーションをビジネス・ニーズに適合させる。

  • アジャイル開発を拡大する際に、適切な評価指標を適用する。

  • アジャイル実践者となるワークフォースを育成する。

  • ハイブリッド統合プラットフォームを段階的にデリバリする。

  • アジャイル・トランスフォーメーションのロードマップを作成する。

  • DevOpsとDevSecOpsを成功させる。

  • パブリック・クラウド展開に向けてアプリケーションを評価する。

  • SaaSを大規模に採用する。

CIOは、チームを再編してディスラプションを受け入れることに意欲的なインフラストラクチャ/オペレーション (I&O) のリーダーを求めている。なぜなら、新型コロナウイルス感染症の収束後にビジネス・リーダーが新たな方法でプロダクト/サービスを生産し、デリバリし、拡大するためには、インフラストラクチャが主導するディスラプション (Infrastructure-Led Disruption: ILD) が必要だからである。それはどのように実現できるだろうか。

I&Oリーダーは、変革のためのプラットフォームを構築することで、大規模に投資することなく迅速に業務を遂行できる新たな方法を試すべきである。以下に例を示す。

  • 新たなオペレーティング・モデル

  • 徹底的な自動化

  • プロダクト・チームのコラボレーション

  • クラウド、エッジ、AIなどのテクノロジの活用

  • イノベーションを促進するためのテクノロジ戦略に適合した人材戦略

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • 最新のI&Oのトレンドを追跡する。

  • クラウド・センター・オブ・エクセレンス (CCOE) を構築する。

  • ILDを推進する。

ほとんどのIT部門において、情報セキュリティは後から追加する拡張機能ではなく、中核的なプラクティスになりつつある。ビジネスのデジタル化が進むと、収益が増え、サイバー攻撃にさらされるブランドも増える。サイバー攻撃に対処するために、CIOは、環境の変化や新たな攻撃に直面した企業を守るための戦略やプロセス、ツール、手法に優先順位を付けている。

これと同時に、CIOは、セキュリティに対するニーズとビジネス運営に対するニーズとの間でバランスを取らなくてはならない。トレードオフは戦略的な選択であり、CIOが執行委員会と取締役会に明示し、彼らと交渉するものである。

CIOは、この説明責任の領域に含まれるGartnerのエッセンシャル・フレームワークを使うことで、以下を実現できる。

  • ビジネス上の意思決定としてサイバーセキュリティを管理する。

  • サイバーセキュリティのリスク、価値、コストを最適化する。

  • 情報セキュリティ戦略を1ページにまとめる。

CIOにとって重要な領域:ITをビジネスとして運営する

CIOは、ITをビジネスとして運営して初めて、執行委員会や取締役会から信頼を得られる。そうすることで、CIOは彼らの同僚や仕事仲間として、I&Tの価値を高めることができる。デジタル・ビジネスにおいて、ITとビジネスは共生関係にある。IT部門は自社のビジネスおよび、その戦略目標と推進要因を理解し、ビジネス・リーダーは高いデジタル・デクステリティを身に付ける。CIOは、ステークホルダー管理を通して、I&Tに関する経営幹部の理解の溝を埋める。

先進的なCIOは、ITがビジネス・パフォーマンスにどのように貢献し、IT財務をどのように管理してコストやリスク、価値を最適化しているかを示している。ソリューションやパッケージ、サービスのソーシングは、パフォーマンスとエコシステムのアライアンスを最適化するために、戦略的かつ機会追求的に行われる。

CIOがITをビジネスとして運営するためには、強力な財務コンピテンシが必要である。CIOは、ビジネス・リーダーと連携して、価値と機会を最大化しつつコストとリスクを最小化するビジネスケースを作成する (図6参照)。これに加えて、CIOは、IT部門の活動と企業のビジネス・パフォーマンスの間に直接的なつながりがあることを実証する。

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