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2018年12月11日

ガートナー、クラウド推進に当たって留意すべきトレンドを発表

デジタル時代においてクラウドはマストであり、日本企業はスキルセット、マインドセット、スタイルとカルチャーの転換を図るべき

ガートナー ジャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下 ガートナー) は、クラウド推進に当たって留意すべきトレンドを発表しました。

クラウド・コンピューティングが市場に登場してから10年以上が経過した今日、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) のような本物のクラウド(*)の採用を本格化させる企業がようやく現れています。2018年版のハイプ・サイクルにおいても、クラウド・コンピューティングは、改めて実質的な市場浸透が始まる啓蒙活動期に位置付けられ、その利用が当たり前になりつつあります。しかしながら、クラウドに関してガートナーに寄せられる相談や問い合わせでは、クラウドを利用するに当たっての進め方や議論の内容にいまだに誤解が見られ、企業が混乱している様子がうかがえます。例えば、以下のようなケースが散見されます。 

(*)本物のクラウド:本来、クラウドには「本物」も「擬似」もなく、「本物」だけがクラウドであるとガートナーでは考えています。しかし、一般的には、外部サービスであれば何でもクラウドと言われていることも多いため、あえて「本物のクラウド」と表記しています。 

  1. 本物のクラウドであっても丸投げしようとし、想定外の見積もり金額を提示される
  2. クラウド化することで絶対にコストを削減できると経営者が信じ、クラウドを推進しようとしている
  3. 担当者がアカウントを取得するまでに3年かかっている 
  4. 現場エンジニアが自費で書籍を購入したりトレーニングを受講したりしている
  5. サービス部品レベルの概念実証 (POC) (という名の評価) を行おうとしている
  6.  基幹系システムをクラウド化できるか、そのメリットは何か、といった質問を今でも繰り返している 
  7. クラウド化で、サーバレスやコンテナ/マイクロサービスが使えないかといった議論をしている
  8. モード1のクラウド化の議論だけで、モード2やデジタルの議論をほとんどしていない 

上記は、AWS、Azure、GCPといった本物のクラウドを前提とした場合によく見られるケースです。これらの中から以下の2点について解説します。 

ケース1:本物のクラウドであっても丸投げしようとし、想定外の見積もり金額を提示される

ある金融機関が、AWSの利用を前提に、ある業務システムのクラウド化の提案をインテグレーターに依頼したところ、数百人月に相当する数億円の見積りを提示されるケースがありました。本件は、インテグレーターが悪意で引き起こしたわけではありません。むしろインテグレーターは、金融機関であるユーザーは従来どおり高いシステム要件を求めていると想定し、モード1のやり方で「しっかり作ってきっちり運用」、つまり松竹梅の「松」型の提案をしたのです。要件を「松」と仮定し、クラウド化プロジェクトの進め方においても、ウォーターフォール型、すなわち要件定義、概要設計、詳細設計、実装、テスト、運用という一般の業務システムでは当たり前の工程を基に工数見積もりが行われていました。 

ガートナーのアナリストで、ディスティングイッシュト バイス プレジデントの亦賀 忠明は次のように述べています。

「インテグレーターに丸投げすれば、AWSのような本物のクラウドであっても、こうした提案を受けることになるとユーザーは覚悟しておく必要があります。しかし、そもそもの問題は、移行対象となるシステムの要件がどのレベルかを、ユーザーが事前に明らかにしていないことです。例えば、99.999%以上の稼働率を絶対に求めるのであれば、クラウドは適切な選択肢ではありません。また、システムが絶対に変わってはならない場合も、クラウドは適切ではありません。なぜなら、本物のクラウドは変わることを前提としたものだからです。ユーザー企業が『クラウド化』を進める際には、ベンダーやインテグレーターに丸投げせず、自動車と同様にクラウドを『自分で運転』することにより、そのリアリティを理解する努力をする必要があります」

ケース8:モード1のクラウド化の議論だけで、モード2やデジタルの議論をほとんどしていない

日本の大手企業からは、基幹系システムをどうしたらよいか、クラウド化をどう進めていけばよいのか、といった質問や相談がガートナーに多く寄せられています。一方、「モード2やデジタルにはビジネス部門が取り組んでいるようなので、IT部門はモード1に集中している」と述べる企業や、「モード2にはビジネス主導で取り組むことが確実であり、ビジネス部門は既に自分たちでAWSなどを試している。今後もIT部門はモード1中心となるが、これでよいのか」と悩んでいる企業も多く見られます。

クラウドに関する最大の問題は、その議論に5~10年もの長い期間を費やしていることです。ガートナーでは、クラウドの議論をバイモーダルで捉えることを推奨しています。バイモーダルの考え方を採用することで、企業は、クラウドの議論を、モード1に属する「既存業務システムのクラウド化」と、モード2に属する「デジタルを活用した新しいビジネス・アーキテクチャの策定と推進」に明確に分けられます。 

長期的に見た場合、モード1の既存業務システムはいずれその役割を終え、モード2のクラウド・ネイティブな環境に取って代わられます。こうしたトレンドはここ1年で急加速しています。クラウド・ネイティブな環境では、従来型のモード1のシステムに付きものであった「完璧なシステムを作り運用する」といった発想は成り立ちません。そこでは、本物のクラウドから提供されるサービス部品を駆使しながらビジネス・サービスの「継続的改善」をアジャイルに行うための、卓越したスキルが求められるようになります。

こうしたスキルの獲得は、想像以上に困難です。そのためにはまず、AWS、Azure、GCPなどで提供される、AI (人工知能)、IoT (モノのインターネット) やブロックチェーンを含む100を超えるサービス部品について理解する必要があります。その上で、コンテナ、マイクロサービス、サーバレス、Infrastructure as Code、DevOps、継続的インテグレーション/継続的デリバリ (CI/CD)、サイト・リライアビリティ・エンジニアリング (SRE)、サービス・メッシュ、クラウド・ネイティブにおける進化可能なアーキテクチャといった新しいテーマを学びながら、チームでスキルを実践的に活用することになります。これには5年以上の時間を要します。今後、メガプレーヤー間の競争は一段と熾烈になり、ビジネスに一層のインパクトをもたらすさまざまな新しいサービス部品の投入が予想されます。クラウド・ネイティブな環境は今後さらに進化します。企業には、こうした変化に着実にキャッチアップするための機動力が求められるようになります。

前出の亦賀は次のように述べています。

「現在、多くの企業がデジタル・トランスフォーメーションの必要性を認識し始めていますが、そうした企業にとって、クラウドの推進はマストとなります。その重みを、ユーザー企業、特に経営者は十分に認識し、『人材投資』を機軸に、必要な対策を早期に講じる必要があります。さもなければ、企業は今後10年以内に、ビジネスそのものをディスラプターに破壊される恐れがあります。もっともそれ以前に、ユーザー企業は、クラウドが『利用者の自己責任を原則とする標準サービス』であることを理解すべきです。クラウドは使えるのか、セキュリティは大丈夫かといった議論はもとより、クラウド・ベンダーに提案要請書 (RFP) を出そうとしたり、すべての損害賠償をクラウド・サービス・プロバイダーに負わせようと契約でもめたりする例が今でも散見されますが、これらはそもそもユーザーがクラウドを適切に理解していないことが原因です。Amazon Web Services、Microsoft、Googleといったメガプレーヤーから提供されるクラウドは、従来のアウトソーシングではありません。また、システム・インテグレーションでも、単なる仮想ホスティングでもありません。企業は、本物のクラウドとそのインパクトを、速やかに正しく認識し、早期に次のステップへと移る必要があります」 

 

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「クラウド推進に当たっての『違和感』を払拭する」(INF-18-175、2018年11月9日付) で詳細をご覧いただけます。 

ガートナーは来る2019年4月23~25日、「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」を開催します。本コンファレンスでは、未来志向のビジネスおよびテクノロジのリーダーに対して、昨今の状況と将来の方向を踏まえ、取るべき戦略やアクションとアドバイスを提示します。 

本コンファレンスの詳細については下記Webサイトをご覧ください。 https://www.gartner.co.jp/event/dc/

本イベントのニュースと最新情報は、ガートナーのTwitter (https://twitter.com/Gartner_jp) でもご覧いただけます (#GartnerIO)。

ガートナーについて

ガートナー (NYSE: IT、S&P 500) は、世界有数のリサーチ&アドバイザリ企業です。ビジネス・リーダーが今日のミッション・クリティカルなビジネス課題の解決を実現し、将来にわたって成功する組織を築くために欠かせない知見、アドバイス、ツールを提供しています。

ガートナーのリサーチは、エキスパート主導かつ、実務担当者からの情報に基づき、データを重視したもので、この比類なきサービスにより、お客様が重要な課題に対して正しい判断を下せるよう導きます。業界や企業規模を問わず、ほとんどすべての職務領域にわたり、ガートナーは信頼されるアドバイザーならびに客観性を備えたリソースとして、世界100カ国以上、1万5,000社を超える企業に支持されています。

ガートナーは、意思決定者が未来に向けてビジネスを推進できるよう支援します。

詳細については下記Webサイトでご覧いただけます。

gartner.com/jp

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