市場定義/説明
Gartnerでは、製品中心企業向けのクラウドERP(企業資源計画)市場を、製品の製造、流通、配送、サービスに関する業務および財務活動の自動化をサポートするアプリケーション技術の市場と定義しています。Gartnerは、ERPを企業経営の基盤技術と考えています。クラウドERPは、クラウドサービスアプリケーションを導入することで利用できます(注記1参照)。当社が定義した「クラウドサービス」の属性の全一覧は、「除外基準および包含基準」をご参照ください。
製品中心向けクラウドERPスイートのメイン機能は以下の通りです。
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業務用ERP: 需要管理、受注管理、資材所要量計画、在庫管理、サプライチェーン/直接購買、製造管理機能、流通/ロジスティクスなどのサプライチェーンおよび製造関連の機能。
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財務管理: 財務会計、補助元帳会計、連結決算、財務報告 (ただし、財務管理の機能のみをスイートとして提供しているベンダーは、「Magic Quadrant for Cloud Core Financial Management Suites for Midsize, Large and Global Enterprises」の中で別に評価されています)。
製品中心向けクラウドERPスイートのオプション機能は以下の通りです。
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Procurement: 調達:間接的な商品、サービス、資本設備の請求書および発注書管理。
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人材管理(HCM): 運用リソースのためのコスト管理および人材配置。
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特化した業界固有のモジュールやアプリケーション: これには、受注仕様生産(CTO)、受注生産(MTO)、フィールドサービス管理のためのモジュールや、企業資産管理(EAM)や製品ライフサイクル管理(PLM)などの広範なアプリケーションソリューションなどがありますが、これらに限定されるものではありません。
マジック・クアドラント
図1:製品中心企業向けクラウドERPのマジック・クアドラント
出典:Gartner(2021年8月)
ベンダーの入れ替え
当社は、マジック・クアドラントへの追加基準を市場の変化に応じて見直し、調整しています。これらの調整によって、マジック・クアドラントで評価されるベンダーの構成は、見直しの都度変化する可能性があります。ある年のマジック・クアドラントに含まれていたベンダーが翌年の評価対象から外れたとしても、それは必ずしも当社がそのベンダーに対する意見を変更したということを意味しません。市場の変化や、それに伴う評価基準の変化を反映させた可能性もあれば、あるいはそのベンダーのフォーカスが変化したという可能性もあります。
選出と除外の基準
Gartnerの顧客のために、マジック・クアドラントおよびクリティカル・ケイパビリティ調査は、市場にとって最も重要な意味をもつプロバイダーとその製品を特定し分析します。通常、Gartnerは20社という上限を定めてプロバイダーを選出し、集中的な調査を実施します。顧客にとっての調査の価値が損なわれる可能性がある場合には、この上限は引き上げられる場合があります。選出基準は、Gartnerの分析担当者が本調査の対象とするために必要な要素として考慮するものです。
選出されるには、以下の基準を充足する必要があります。
製品の機能
各ベンダーには、以下の機能を含むクラウドベースかつ製品中心のERPアプリケーションスイートを提供していることが求められます。
その他オプション機能:
市場での存在感
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各ベンダーには、少なくとも150社の顧客企業を有していることが求められます。これらの顧客はクラウドサービスを使用する生産によって年間で1億5,000万ドルを超える収益/費用/資金調達を計上している必要があります。各顧客企業には、業務用ERPに関する少なくとも3つのコンポーネント(モジュール)、ならびに少なくとも総勘定元帳、買掛金勘定および売掛金勘定に関する機能を利用していることが求められます。各ベンダーは、実際に製品を利用している十分な数の顧客を有していることを証明する必要があります。ベンダーがこの情報を開示しないことを選択した場合、ベンダーの選出適格性および存続性を判断するために、Gartnerは自社による市場調査や公開情報源を利用した可能性があります。
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これら150社には、ERPスイートによって少なくとも年間で1億5,000万ドルを管理していることが求められます。より規模の小さい子会社のみが補助的なERPソリューションとして当該クラウドサービスを使用している場合、親会社の年間収益を考慮に入れることはできません。
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ベンダーには、本拠地の地域以外でクラウドサービスの積極的な販売およびマーケティング活動を行っていること(ならびに、基準額以上の収益を上げるユーザーが当該クラウドサービスを現状で使用していること)が求められます。Gartnerが定義する地域とは、南北アメリカ、EMEA、アジア太平洋です。クラウドサービスによる収益の少なくとも10%は、本拠地の地域外から発生している必要があります。
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ベンダーには、2020年1月から2020年12月までの期間(またはこの期間に最も近い任意の12か月の会計期間)において、ERPスイートのクラウドサービスのみ(つまりオンプレミスサービス、ホスティングサービス、マネージドクラウドサービス、その他の導入モデルは除外)で、サブスクリプション収益およびサポート収益を少なくとも1,500万ドル計上していることが求められます。未実現の経常収益を含めることはできません。ベンダーが収益情報を開示しないことを選択した場合、ベンダーの選出適格性および存続性を判断するために、Gartnerは自社による市場調査や公開情報源を利用した可能性があります。
クラウドサービスの属性
対象のERPスイートは、次の属性定義に則したクラウドサービスとして導入される必要があります。
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責任:
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ライセンス供与およびテクノロジー:
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対象のクラウドサービスは、サブスクリプションベースまたは使用状況に応じたライセンス供与を採用している必要があります。
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特定のユーザー専用の契約内容(若干の調整は除く)がある場合や、他のクラウド利用顧客とは異なるバージョンの製品を提供している場合は選考対象外となります。
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対象のクラウドサービスは、インターネットテクノロジーを使用している必要があります。クラウドサービスインターフェイスの提供には、インターネットファイル、フォーマットおよび識別子の使用が必須です。
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クラウドサービスのサポートに使用されるコンピューティング資源は、専用ハードウェア/インフラではなく、ほぼリアルタイムで拡張や変更を行える必要があります。
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カスタマイズの可能性:
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変更ペース:
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ベンダーが提供する新たな機能の迅速な導入を可能にするため、クラウドサービスを利用するすべての顧客に対して単一のコードラインが使用されることが求められます。
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ベンダーは、クラウドサービスを利用するすべてのユーザーに対して、新機能を含むアップグレードを年に少なくとも2回行う必要があります。また、この更新サイクルのペースを維持する必要があります。 すべての顧客は、次の更新バージョンがリリースされるまで、現行の最新バージョンを利用している必要があります。
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ベンダーは、自社の社員を関与させる必要のない、(少なくとも開発およびテストインスタンスにおける)サービスのセルフプロビジョニング機能を提供する必要があります。
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弾力性のあるサービスを実現するために必要なリソースプールを構築できるように、サービスの提供のために使用されるテクノロジーは、複数の顧客によって共有されている必要があります。
本マジック・クアドラントは、Gartnerによる「構成可能なERP」の定義を反映しています。当社は、構成可能なERPを、事業変化のスピードに対応するために企業に求められる基礎的な管理用・業務用デジタル機能を実現する、適応可能なテクノロジー戦略と定義しています。この戦略では、将来の最新テクノロジーに対応するため、構成可能なアプリケーションおよび(サービスとしての)ソフトウェアプラットフォームの中核部分を提供します。これらは、高度に設定可能で、相互運用でき、高い柔軟性を有します。
したがって、ベンダーのクラウドERPスイートが異なるコードラインによる機能から構成される場合、ベンダーが本マジック・クアドラントの評価対象として選出されるには、そのソリューションは以下の条件を満たす必要があります。
特筆すべき選外のベンダー
ベンダーの中には、本マジック・クアドラントの選出対象とはならなかったものの、特定の業界または地域に特化した、注目すべき価値を提供する企業がありました。そのベンダーは以下の通りです。
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Comarch: Comarch ERP Enterpriseは、幅広いテナント環境およびホスティング環境で利用可能です。Comarchは、欧州市場にフォーカスしており、本マジック・クアドラントが提示する大規模または多国間/グローバル規模の要件を満たしていません。
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Dassault Systèmes(DELMIAworks):DELMIAworksは中堅・中小企業向けの製造ERPマーケットでは存在感を確立していますが、顧客の多くがDELMIAworksのERPをオンプレミスで、またはホスティングソフトウェアとして利用しているため、本マジック・クアドラントの選出基準を満たしませんでした。DELMIAworksは、Dassault Systèmesが展開する3DEXPERIENCE WORKSポートフォリオの一部です。
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Hatteland: Hattelandは欧州に拠点を置き、クラウド環境における製造ERPを専門に扱う企業です。RamBase Cloud ERPソリューションを利用する顧客ベースの規模が、本マジック・クアドラントの選出基準を満たしませんでした。
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Ramco Systems:Ramco Systemsは、米国、EMEAおよびアジア太平洋地域の顧客向けに管理用および業務用ERPを提供しています。クラウドERP製品を利用して1億5,000万ドルの年間収益を達成する顧客数が、本マジック・クアドラントの選出基準に到達していません。
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Rootstock Software: Rootstock Softwareは、Salesforceテクノロジープラットフォーム上でERPを提供します。そのERPスイートは、中規模企業をターゲットにしています。クラウドERP製品を利用して1億5,000万ドルの年間収益を達成する顧客数が、本マジック・クアドラントの選出基準に到達していません。
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SAP(Business ByDesign):製品中心の機能を有するSAPのBusiness ByDesignサービスは、主に中規模企業をターゲットにしており、大企業向けには基本的に販売されません。
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TOTVS: TOTVSは、ラテンアメリカ市場でクラウド環境におけるERP分野をリードするプロバイダーです。クラウドERP製品スイートは、グローバル展開の割合が本マジック・クアドラントの選出基準を満たしていません。
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Workday: Workdayは、クラウド環境におけるHCM、財務管理、計画、調達アプリケーション分野で業界をリードするプロバイダーです。企業向けクラウドERP製品スイートは、本マジック・クアドラントの選出基準を満たす製品中心のサプライチェーンおよび製造機能を有していません。
評価基準
実行能力
Gartnerは、製品、テクノロジー、サービス、オペレーションを評価することでベンダーの「実行能力」を決定しています。これらの評価項目は、ベンダーが市場において高い競争力を保ちながら効率的かつ効果的に事業を展開するために必要であり、収益、顧客満足度、顧客の保持、一般的な市場評価に有利な影響を及ぼします。ベンダーの実行能力については、表1に示された項目を使用し、それらの達成度合いによって判断します。
表1:実行能力の評価基準
| 評価基準 |
加重 |
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製品/サービス
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高
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企業としての全体的な存続性
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中
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販売実行能力/価格設定
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高
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市場対応力/実績
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中
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マーケティングの実行能力
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低
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顧客エクスペリエンス
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高
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経営
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中
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出典:Gartner(2021年8月)
ビジョンの完全性
Gartnerは、現在および未来の市場動向の見通しを明確に示す能力、顧客のニーズやクラウドテクノロジーの動向を予測する能力、競争力を高める能力を評価することで、ベンダーの「ビジョンの完全性」を決定しています。さらに、ベンダーが、自社および自社の顧客に新たな機会をもたらすために市場原理を活用する方法を理解し、明確に示しているかどうかを評価することで「ビジョンの完全性」を判断します。評価には表2の項目を使用します。
表2:ビジョンの完全性の評価基準
| 評価基準 |
加重 |
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市場の理解
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高
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マーケティング戦略
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中
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販売戦略
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中
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サービス(製品)戦略
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高
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ビジネスモデル
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低
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業種/業界戦略
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中
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イノベーション
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中
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地理的戦略
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中
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出典:Gartner(2021年8月)
クアドラントの説明
リーダー
「リーダー」は、クラウド環境への移行によって製品中心のERPシステムやプロセスをどのようにサポートし、改善できるかに関して、市場を定義するビジョンを有しています。「リーダー」は、このビジョンと確かな実行力を組み合わせて、製品、サービス、市場参入戦略を展開します。このようなベンダーは市場における強固な存在感を確立し、収益および市場シェアを伸ばしています。クラウドERPスイート市場では、「リーダー」はさまざまな規模の企業に対して、契約を継続的に獲得する力を示します。このようなベンダーは、業務用および管理用ERPのあらゆる分野において専門的な機能を提供することができます。また、複数の顧客が製品の導入によって成果を達成できたことが証明されています。「リーダー」企業のシステムインテグレーターパートナーは、ビジネストランスフォーメーションの取り組みに際して、当該企業のサービスを利用することが一般的です。
あるベンダーが「リーダー」に分類された場合でも、当該ベンダーのソリューションがあらゆるユースケースに対して機能と技術の観点から最適なわけではありません(「Gartner社マジック・クアドラントにおける市場とベンダーの評価」を参照)。本マジック・クアドラントで取り上げられたすべてのベンダーは高い存続可能性を有するクラウドERPスイートを提供しており、いずれも評価に値します。Gartnerでは、2021年第3四半期に本マジック・クアドラントの付属レポートとしてクリティカル・ケイパビリティ・レポートを作成する予定です。読者はさまざまなユースケースに対してベンダーのソリューションを評価することが可能です。これにより、自社のユースケースに最適なソリューションを決定することが可能になります。
「リーダー」は通常、幅広い市場要件をサポートすることで、幅広い市場顧客のニーズに応えます。ただし、このようなベンダーは垂直市場に特化したニーズや、より専門的な分野のニーズには応えられないことがあります。このようなニーズに対しては、「特定市場指向型」のベンダーが優れた対応力を発揮します。
チャレンジャー
「チャレンジャー」は、「特定市場指向型」および「概念先行型」に比べて、市場におけるより大きな存在感を獲得しています。このようなベンダーは、特定の市場分野では確かな存在感を獲得していますが、広範な市場において一貫した対応が可能なほど包括的なビジョンは有していません。「チャレンジャー」は、製品中心のERPアプリケーションおよびプロセスに対するニーズの高まりを理解し、クラウドに進出しています。このようなベンダーは、高い存続可能性を持っている実績豊富なクラウドサービスを提供していますが、特定の規模の企業や特定の業界にフォーカスを絞っています。機能性の向上や拡張に力を入れて市場をリードする製品を目指すより、特定の業界または企業規模に特化した機能の開発にフォーカスしている可能性があります。
市場に適応したビジョンとフォーカスを確立できれば、「チャレンジャー」は「リーダー」になることができます。時間の経過による製品サイクルや市場ニーズの変化に伴い、ERPプロバイダー企業はクアドラント内で「チャレンジャー」と「リーダー」の間を推移することが予想されます。
現行のマジック・クアドラントにおいて「チャレンジャー」は存在しません。
概念先行型
「概念先行型」のベンダーは、アプリケーションのクラウド移行に伴ってERPがどのように変化していくかを理解しています。このようなベンダーは、テクノロジーおよび機能に関する優れたビジョンを有していますが、実行能力や実績については限定的です。当該ベンダーのソリューションは、製品中心のERPシステムおよびプロセスを積極的にクラウドに移行したいと考えている企業にとって魅力的であり、一部の分野ではその機能性において差別化を実現できている可能性もあります。市場での存在感および本拠地以外の地域における存在感に関しては、限定されている傾向にあります。したがって、「概念先行型」のベンダーを検討中の企業は、自社の業界および地域における市場での存在感を注意深く評価する必要があるでしょう。
「概念先行型」のベンダーは、市場参入能力をいかに確立するか、および自社の強みを強化するパートナーシップを構築可能かどうかによって、「チャレンジャー」または「リーダー」になる可能性があります。
特定市場指向型
マジック・クアドラントの詳細な仕組みを理解していない場合、「特定市場指向型」のベンダーに対して、能力の低いベンダー、または機能性の低い製品を提供するベンダーというイメージをもつ傾向があります。これは誤った見解であり、ベンダーの能力が見過ごされる原因となりかねません。
「特定市場指向型」は特定の業界分野や企業規模をターゲットとして、競合他社よりも専門的な機能を提供します。例えば、「特定市場指向型」のベンダーは、プロジェクト中心的な製造、資本集約型の製造、またはプロセス製造にフォーカスを絞っており、あらゆる製造タイプに対応可能な幅広い機能は提供していない可能性があります。そのため、機能的な条件が合えば、「特定市場指向型」のベンダーが最高のソリューションとなる場合もあります。
「特定市場指向型」のベンダーはクラウドERP機能を提供していますが、「ビジョンの完全性」および「実行能力」の両方が限られています。例えば、「特定市場指向型」のベンダーはクラウドテクノロジーに関する強固なビジョンを有していない場合があります。その代わりに、クラウド対応可能な既存アプリケーション(現在クラウドサービスとして提供しているが、クラウドネイティブソリューションほど使いやすくはない)を有している可能性があります。「特定市場指向型」のベンダーは、非常に強力なクラウド機能を有している場合もありますが、そのクラウドソリューションの導入状況は非常に限られている可能性があります。
「特定市場指向型」のベンダーは、オンプレミスソリューションを利用している大規模な顧客ベースを有しており、ERP市場全体においては高い市場シェアを達成している場合があります。そのため、このようなベンダーが提供するパブリッククラウドERPスイートは比較的新しい傾向にあります。ロイヤルティの高い大規模な顧客ベースのニーズと、パブリッククラウドオプションに対する新たなニーズの間でバランスを取れるように、慎重な戦略を採用している可能性があります。したがって、本マジック・クアドラントにおける「特定市場指向型」のベンダーについては、高い存続性を有するクラウドERPスイートのプロバイダーとして検討するべきでしょう。ただし、「特定市場指向型」のベンダーのフォーカスを理解し、自社のビジネスニーズに適しているかどうかを確認することが重要です。「特定市場指向型」のベンダーが提供する製品に魅力を感じた場合、その製品が市場動向および自社のビジネス目的とどの程度合致しているかを評価する必要があります。
市場状況
本マジック・クアドラントで評価されているすべてのベンダーは、製品中心企業に向けて、クラウドを活用したERPスイートの販売およびサポートを行っています。すべてのベンダーは、本拠地以外の地域においてもソリューションのマーケティング活動および販売を行っており、全ベンダーが国際的に事業を展開しています(限定的な場合もあります)。ただし、各国に特化したローカライゼーションサポート(税務処理など)の点では、ベンダーによってその程度が異なります。複数の言語によるソリューションの利用可能性についても同様です。したがって、クラウドERPスイートの検討を始める際に、アプリケーション責任者は必要な言語およびローカライゼーションを明確に把握することが重要です。これにより、自社のニーズを満たすことができないベンダーを検討の初期段階で除外することが可能になります。
Gartnerの顧客調査データは、クラウドERPスイートへの関心が大幅に増加していることを示しています。しかし、ERPスイートへの移行を希望する顧客は、SaaSに関する誤解に翻弄されることが少なくありません。多くの企業は、クラウドに移行することで、オンプレミスERPスイートで直面する課題(使いづらいUI、膨大なカスタマイゼーション、高コストかつ管理が難しいアップグレードなど)を迅速かつ容易に解決できると考えているようです。本マジック・クアドラントで評価されているソリューションはすべて、このような課題の一部または全部に対応できる可能性があります。しかし、クラウドへの移行にあたり、CIOやアプリケーション責任者は以下のような点について準備しておく必要があります。
市場概要
ERPは、企業ソフトウェアに関する支出において最大のカテゴリーです。2020年には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにもかかわらず、ERPソフトウェアの収益は全体として4%成長し、全世界で合計403億ドルとなりました(出典:Gartner「市場シェア:ERPソフトウェア、全世界、2020年」)。Gartnerはこの数字が2021年から2022年に7%増加(為替変動の影響を除いた場合)して、440億ドルに達すると見込んでいます。
製品中心のERPソフトウェアの収益が、ERP市場全体の収益の約半分を占めています。パンデミックの影響により、製造業向けのERPアプリケーションの収益が全体として2%減少したことでクラウドERPの収益も影響を受けましたが、管理用およびサービス中心のERPアプリケーションの収益は増加しています。Gartnerは、製造業向けERPアプリケーションの成長を見込んでおり、2021年には増加に転じると予測しています。
とりわけ、パンデミックがエンドユーザーに迅速な導入の必要性を示したこともあり、2020年はクラウドERPのメリットが明確に証明された年であったと言えます。製品中心企業に対するクラウドERP市場は主に中規模企業に支えられていますが、大企業もこれまでにないペースで導入を進めています。クラウドERPの導入においては、HCMおよび財務管理のクラウドソリューションが特に増えています。さらに、サプライチェーン、製造、オペレーション、および企業資産管理に関するクラウドソリューションの導入率は、前年までよりも速いペースで増加しています。
エビデンス
Gartnerは、本マジック・クアドラントにおける選出基準、市場定義および評価に、複数の情報源を使用しています。主要な情報源は以下の通りです。
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1,400社以上のエンドユーザー企業を対象に実施した、2020年1月から2021年4月にかけてのERP戦略に関する聞き取り調査。
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2020年1月から2021年4月にかけてERPアプリケーションに関して寄せられた、顧客からの5,200件を超える問い合わせ。
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2021年4月までに収集されたPeer Insightsの調査データ、およびデモンストレーションからのインサイト。
注釈1: クラウドサービスの種類
本マジック・クアドラントの選出基準を満たすクラウドサービスとして、4種類を特定しました。
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「Born in the cloud(クラウド専用)」ソリューション:最初からクラウドサービスのみを想定して設計されたソリューションで、通常はマルチテナントに対応可能なアプリケーションアーキテクチャーになっています。
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新世代ソリューション:複数の導入モデル(一般的にはパブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス)への対応を想定して設計されたソリューション。通常はデータベースやオペレーティングシステムレベルでマルチテナントをサポートしていますが、アプリケーションレベルではサポートされていない場合もあります。また、仮想化技術を活用することで、データのセキュリティを確保しながら単一のコードラインを実現します。
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クラウドサービスとして再設計された既存ソリューション:複数の導入モデル(パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス)に対応するという点では新世代ソリューションと類似しています。ただし、新世代ソリューションが設計時点でそれを想定している一方で、この種類のソリューションを展開するベンダーは、既存アプリケーションの基盤アーキテクチャーに大幅な変更を加えることでパブリッククラウド環境での導入を可能にしています。
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パブリッククラウドSaaSとして提供される既存ソリューション:基盤アーキテクチャーには大幅な変更が加えられていませんが、インフラのプロビジョニングレイヤーを開発することでパブリッククラウド環境での提供を可能にしています。
評価基準の定義
実行能力
製品/サービス:ベンダーが特定の市場に向けて提供する主要な財・サービス。これには、ネイティブで提供されるか、OEM契約およびパートナーシップによって提供されるかに関わらず、前述の市場定義で定義し、小項目で説明したように、現在の製品およびサービスの能力、品質、機能群、スキル等が含まれる。
企業としての全体的な存続性:存続性には、総合的な企業の財政状態、事業単位の財政上および実務上の成功、そして、個々の事業単位が製品に対して継続的に投資していく可能性、継続的に製品を提供していく可能性、ならびに、企業の製品ラインを最先端のものに改善していく可能性に対する評価が含まれる。
販売実行能力/価格設定:販売前の活動におけるベンダーの能力および活動を支える体制。これには、取引管理、価格設定および交渉、プレセール・サポート、ならびに販売チャネルの全体的な有効性が含まれる。
市場対応力/実績: 機会の発生、競合の動き、顧客のニーズ変化、および市場ダイナミクスの変化に対して反応し、方向性を変え、柔軟に対応し、優位な成果を獲得する能力。この基準は、ベンダーの過去の反応能力についても考慮する。
マーケティングの実行能力:企業メッセージを伝えるために立案されたプログラムの明瞭さ、質の高さ、創造性および有効性。これらは、市場に影響を与え、ブランドや事業を推進し、製品の知名度を向上させると共に、製品/ブランドおよび企業に対するポジティブな印象を購入者の脳内に植え付けることにつながる。この「マインドシェア」は、知名度、販売促進活動、ソート・リーダーシップ、口コミ、および販売活動が総合的に影響して向上する。
顧客エクスペリエンス:評価対象の製品に対する顧客の成功体験を可能にする関係性、製品、サービスおよびプログラム。これには特に、顧客が受ける技術サポートやアカウントサポートの体制が含まれる。また、補助的なツール、顧客サポートプログラム(およびその品質)、ユーザーグループの有無、サービス品質保証等も含まれる。
経営: 目標や約束の達成に向けた企業の能力。この要素としては、企業が、継続して効果的かつ効率的に事業運営を行う上で必要なスキル、経験、プログラム、システムおよびその他媒体等を含む企業構造の質が含まれる。
ビジョンの完全性
市場の理解:購入者の要望やニーズを理解し、その理解を製品やサービスに反映させるベンダーの能力。高水準のビジョンを示すベンダーは、購入者の要望やニーズに耳を傾け、理解し、また、新たなビジョンを加えて、その要望やニーズを実現し、あるいは上を行くことができる。
マーケティング戦略:明確かつ差別化が図られた企業メッセージを、企業内で継続的に共有し、また、ウェブサイト、広告、顧客プログラムおよびポジショニングステートメントを通して外部に対して発信していること。
販売戦略:事業展開範囲、スキル、専門性、技術、サービスおよび顧客ベースをより幅広く、強固なものにするため、直接販売および間接販売、マーケティング、サービスおよびコミュニケーション関連会社の適切なネットワークを使用した製品販売戦略。
サービス(製品)戦略:現在と将来の課題を明確にしながら、他社との違い、機能性、方法論および機能群に重点を置いた、ベンダーによる製品開発および製品販売のアプローチ。
ビジネスモデル:ベンダーの基本的なビジネス提案における健全性および論理性。
業種/業界戦略:垂直市場を含む、個別の市場区分が抱える特定のニーズを満たすことを目的として、資源、スキルおよびサービスを割り当てるベンダー戦略。
イノベーション:投資、統合、守備的もしくは先制的な行動を目的とした、資源、専門性もしくは資本の直接的、間接的、補完的、および相乗的な配置。
地理的戦略:いわゆる「ホーム」である自国・地域以外の場所に特有のニーズを満たすことを目的として、直接的か、あるいはパートナー、チャネルおよび関連会社を通し、その地域および市場に合わせた方法で、資源、スキルおよびサービスを割り当てるベンダー戦略。