市場定義/説明
クラウドコンピューティングとは、コンピューティングのスタイルの一種であり、インターネット技術を使って拡張性・伸張性のあるIT対応機能をサービスとして提供するものである。Gartnerは、クラウド・インフラストラクチャ/プラットフォーム・サービス(CIPS)の市場を、インフラストラクチャリソース(例:コンピュート、ネットワーク、ストレージ)が統合型プラットフォーム・サービスによって補完されている、標準化され高度に自動化されたサービスと定義している。これらは、マネージドアプリケーション、データベース、FaaS(Functions-as-a-Service)のサービスを含む。これらのリソースは、ほぼリアルタイムでの拡張性・柔軟性があり、従量課金制である。ウェブベースのユーザーインターフェース(UI)およびAPIを含むセルフサービスのインターフェースが、顧客に直接公開されている。これらのリソースはシングルテナントでもマルチテナントでも提供され、サービスプロバイダーがホスティングすることも、顧客のデータセンターにおいてオンプレミスで運用することも可能である。
クラウド・インフラストラクチャ/プラットフォーム・サービス(CIPS)のマジック・クアドラントが対象とする範囲には、IaaS(Infrastructure as a Service)および統合型PaaS(Platform as a Service)が含まれる。これらは、アプリケーションPaaS(aPaaS)、FaaS(Functions-as-a-Service)、データベースPaaS(dbPaaS)、アプリケーション開発者PaaS(adPaaS)、および企業のデータセンターに導入されることの多い産業向け分散型クラウドサービスなどを含む。
マジック・クアドラント
クラウド・インフラストラクチャ/プラットフォーム・サービスのマジック・クアドラント
ベンダーの追加と除外
私たちは、市場の変化に応じて、マジック・クアドラントの追加基準を見直し、調整している。これらの調整によって、マジック・クアドラントで評価されるベンダーは、時の流れと共に変化する場合がある。ある年のマジック・クアドラントに含まれていたベンダーが翌年の評価対象から外れたとしても、それは必ずしも私たちがそのベンダーに対する意見を変更したということを意味しない。市場の変化や、それに伴う評価基準の変化を反映した可能性もあれば、そのベンダーが重視する対象が変化した可能性もある。
追加
Huawei Cloudを本年のマジック・クアドラントに追加した。
選出と除外の基準
マジック・クアドラントおよびクリティカル・ケイパビリティ調査は、Gartnerのクライアントのために、市場にとって最も重要な意味をもつプロバイダーとその製品を特定し分析している。Gartnerは、市場にとって最も重要な意味をもつプロバイダーを識別する上で、プロバイダー20社を既定の上限として用いる。場合によっては、クライアントに対する意図的な研究価値が損なわれる可能性があれば、方法論によって上限が拡張されることがある。以下の選出基準は、本リサーチに含めるために分析担当者が必要と考える特定の属性を表している。
選出対象となる基準
市場への参加。パブリッククラウドIaaSを、マネージドサービス(ゲストOS管理を含む)の利用や、マネージドホスティング、アプリケーション開発、アプリケーション保守、または他の形態のアウトソーシングとのバンドルを要件とせず、スタンドアロンサービスとして販売していること。オプションとして、同じアーキテクチャを使用するがシングルテナントであるプライベートサービスやハイブリッドサービスを販売する場合もある。
市場の牽引力と勢い。ISO 27001の監査(または同等の監査)を受けたデータセンターを、少なくとも3つの大陸に有すること。以下の基準を満たすパブリッククラウドIaaSサービスを少なくとも1つ提供していること。
明確にするために説明すると、収益資格は以下の組み合わせに基づいている。
-
コンピューティング(パブリッククラウドでのVM、ベアメタル、コンテナサービス)
-
ストレージ(パブリッククラウドでのブロック、ファイル、オブジェクトストレージ)
-
ネットワーキング(パブリッククラウドのリソースを支えるソフトウェア定義ネットワーク)
-
データベースPaaS(パブリッククラウドでのフルマネージドデータベースサービス)
一般公開されてから3年未満である場合:2021年度のパブリッククラウドIaaS/dbPaaSの収益が5億ドル以上(ただし、すべてのマネージドサービスおよびプロフェッショナルサービスを除く)で、かつ2021年以降の成長率が50%以上。
Gartnerのクライアントに関連する事業能力。パブリッククラウドIaaSサービスをグローバルに提供していること(自国以外の地域でも購入可能であること)、請求書の発行および一括請求が可能であること、契約のカスタマイズについて交渉する用意があること。24時間365日のカスタマーサポート(電話サポート含む)があること。契約書、サービスポータル、ドキュメント、サポートの英語を現地語で表示可能であること。
Gartnerのクライアントに関連する技術的能力。エンタープライズかクラウドネイティブかを問わず、ミッションクリティカルで大規模な本番ワークロードのサポートに適したパブリッククラウドのIaaSおよびPaaSサービスを提供していること。一般公開されているファーストパーティサービスの具体的機能に、以下が含まれていること。
-
ソフトウェア定義のコンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、およびこれらの機能のためのウェブサービスAPIへのアクセス
-
少なくとも監視と自動スケーリングを含む、自動管理を促進するクラウドソフトウェアインフラストラクチャサービス
-
マネージドデータベースPaaSサービス
-
HTTP APIゲートウェイプラットフォームを統合した、基本インフラストラクチャがユーザーに公開されないマネージドFaaSサービス
-
企業が開発し一般公開されている、3つ以上のプログラミング言語によるSDK
-
ハイパースケールアーキテクチャをサポートする、分散型で継続的に利用可能なコントロールプレーン
-
自動ビルドおよびデプロイメントを含む、完全なアプリケーションライフサイクルをサポートするマネージドCI/CDサービス
-
Gartnerが定義する分散型クラウドサービス(「‘Distributed Cloud’ Fixes What ‘Hybrid Cloud’ Breaks」を参照)
-
コンピューティングインスタンスのリアルタイムプロビジョニング(小規模Linux VMなら5分、1,000台のLinux VMなら1時間)およびDockerコンテナを数秒でプロビジョニング可能なコンテナサービス
-
最低でも16個のvCPUと128GBのRAMを使用可能なVMサイズ
-
可用性を99.9%以上とするコンピューティングのサービスレベル契約
-
顧客のデータセンターのネットワークをクラウド環境へ安全に拡張できること
-
複数のユーザーとAPIキーをサポートし、ロールベースのアクセス制御が可能であること
評価基準
実行能力
表1:実行能力の評価基準
| 評価基準 |
加重 |
|
製品/サービス:
|
高
|
|
企業としての全体的な存続性
|
高
|
|
販売実行能力/価格設定
|
中
|
|
市場対応力/実績
|
高
|
|
マーケティングの実行能力
|
中
|
|
顧客エクスペリエンス
|
中
|
|
経営
|
中
|
|
|
出典:Gartner(2022年10月)
ビジョンの完全性
表2:ビジョンの完全性の評価基準
| 評価基準 |
加重 |
|
市場の理解
|
高
|
|
マーケティング戦略
|
中
|
|
販売戦略
|
中
|
|
サービス(製品)戦略
|
高
|
|
ビジネスモデル
|
中
|
|
業種/業界戦略
|
低
|
|
イノベーション
|
高
|
|
地理的戦略
|
低
|
|
|
出典:Gartner(2022年10月)
クアドラントの説明
リーダー
戦略的な導入に適したサービスを提供し、野心的なロードマップを策定することで差別化を図っている。幅広いユースケースに対応したサービスを提供できるが、すべての分野で優れているわけではない。また、ある特定のニーズに最適なプロバイダーとは限らず、ユースケースによってはまったく対応できない場合もある。この市場の「リーダー」各社は、高い市場シェアと、照会可能な多くの顧客を持っている。
チャレンジャー
現在の市場における一定のニーズに対し十分に応えることができる位置を占めている。特定のユースケースをターゲットにした優れたサービスを提供し、成功させてきた実績がある。しかし、市場の課題への迅速な対応が十分ではない、目指しているものの幅が狭いといった点が見受けられる。
概念先行型
野心的な未来像を持ち、独自技術の開発にかなりの投資を行っている。提供するサービスはまだ新しく、一般にはまだ提供されていない多くの機能を開発中である。多くの顧客を抱えている場合もあるが、幅広いユースケースに対応したサービスの提供はまだできていなかったり、地域的な範囲が限定されていたりすることもある。
特定市場指向型
CIPS市場において、特定のユースケースでの、または事業を展開する地域での卓越したプロバイダーである可能性はあるが、結局のところは専門プロバイダーとみなすべきであろう。また、幅広いユースケースに対応したサービスを十分に提供していない、広範囲にわたって野心的なロードマップを持っていない、といったことが多い。この市場に隣接する市場で確固たる主導的地位を占めている場合があっても、CIPSの能力は限定的にしか伸ばしていないといったこともある。
市場状況
CIPS市場には、技術上またはビジネス上のデメリットとなる可能性のある重大なトレードオフを受け入れることを企業に求めないプロバイダーは存在しない。レジリエンスおよびセキュリティの面でのクラウドプロバイダーの実績は、プロバイダーごとに大きく異なる。本マジック・クアドラントで取り上げたクラウドプロバイダー数社は、この1年間、重大なサービス停止障害に悩まされ続けてきた。中には、プロバイダー側の障害を回避するための透明性と緩和策がほとんど提供されないケースもあった。問題をさらに複雑にしているのは、クラウドプロバイダーが自分では管理していない第三者に実質的、全面的に依存している場合における、企業への影響である。
株式市場の投資家の意思に縛られ、激しい競争の中にあるプロバイダー各社の性質上、最終的に、このようなプロバイダーは売上目標を達成するために強引な手段を取らざるを得なくなる。その方が、心を掴もうとするよりも手っ取り早いからである。
結局のところ、ハイパースケールクラウドプロバイダーの有意義な利用を考えている企業は、各プロバイダーのトレードオフ関係に照らして優先順位を決めてから、トレードオフ関係を緩和させるための後続戦略を立てる必要がある。
市場概要
CIPS市場は、エンタープライズITの将来に長期にわたる影響を及ぼすような顕著な形で変化している。ハイパースケールクラウドプロバイダーは、幅広いITワークロードに対応するクラウドサービスの第一線に立つ戦略的サプライヤーになろうと、企業の取り込み競争を続けている。
企業の取り込みに向けた努力は、ソーシング戦略に関して「マルチクラウドである」べき大半の企業特権とは相容れないものである。問題をさらに複雑にしているのは、オンプレミスで従来から用いられてきた「ベスト・オブ・ブリード」のアプローチが、IDシステム、レジリエンス特性、ネットワークレイテンシー、および顧客の利益のために連携することに対する主要プロバイダー間の全般的な不安の異同を考慮すると、クラウドに関しては当てにならないということである。結局のところ、マルチクラウド・アーキテクチャは、待ち受ける無数の課題に対処できる、最も洗練された顧客層にしかまだ適していない。
企業が一度クラウドプロバイダーの支配下に置かれると、以降、そのクラウドプロバイダーが長期にわたって好意的な存在であり続けることは考えにくい。クラウドプロバイダーの究極の目標は、企業を、より利益率が高く、ワークロードやプロセスを切り離すことがより困難となるPaaSレイヤー内にまで、さらに移動させることである。しかし、ERPに焦点を当てているような従来型のワークロードは、そのミッションクリティカルな性質上、移動も困難になっている。
クラウドプロバイダーの支配下に置かれることに伴う悪影響は、すでに表面化し始めている。世界中の様々な地域にわたってGartnerのクライアントに尋ねたところ、企業ががんじがらめになったとたん、クラウドプロバイダー側に不誠実な行動が見られるようになることが分かった。
一部のクラウドプロバイダーは強硬手段に出て、さらに価格を引き上げた基本利用料に企業が同意せざるを得ないようにしている。他方、オペレーティングシステムおよびリレーショナルデータベース管理システムの利用が定着した層のソフトウェアライセンスを使って、自社の各サービスに対してより多くのクラウド利用が発生するように誘導するクラウドプロバイダーもいる。
今のところ、一部の企業は激しく抵抗しており、その結果、ITサプライヤーの多様化に向けた重大な計画を立てていることが窺える。しかし、複数のクラウドプロバイダーを管理することの複雑さやオーバーヘッドのほか、プロバイダーのコミットメントが低くなることによる割引率の低下も相まって、結果的にTCOを引き上げるマルチクラウド戦略となり、望むようにはそれを下げられないことも多い。
クラウド・インフラストラクチャとプラットフォーム・サービスの市場は、再び動き出している。
評価基準の定義
実行能力
製品/サービス:ベンダーが特定の市場に向けて提供する主要な財・サービス。これには、ネイティブで提供されるか、OEM契約およびパートナーシップによって提供されるかにかかわらず、前述の市場定義で定義し、小項目で説明したように、現在の製品およびサービスの能力、品質、機能群、スキル等が含まれる。
企業としての全体的な存続性:存続性には、総合的な企業の財政状態、事業単位の財政上および実務上の成功、そして、個々の事業単位が製品に対して継続的に投資していく可能性、継続的に製品を提供していく可能性、ならびに、企業の製品ラインを最先端のものに改善していく可能性に対する評価が含まれる。
販売実行能力/価格設定:販売前の活動におけるベンダーの能力および活動を支える体制。これには、取引管理、価格設定および交渉、販売前サポート、ならびに販売チャネルの全体的な有効性が含まれる。
市場対応力/実績:チャンスの出現、競合他社の動き、顧客のニーズ変化、および市場ダイナミクスの変化に対して反応し、方向性を変え、柔軟に対応し、優位な成果を獲得する能力。この基準は、ベンダーの過去の対応実績についても考慮する。
マーケティングの実行能力:企業メッセージを伝えるために立案されたプログラムの明瞭さ、質の高さ、創造性および有効性。これらは、市場に影響を与え、ブランドや事業を推進し、製品の知名度を向上させるとともに、製品/ブランドおよび企業に対するポジティブな印象を購入者の脳内に植え付けることにつながる。この「マインドシェア」は、知名度、販売促進活動、ソートリーダーシップ、口コミ、および販売活動が総合的に影響して向上する。
顧客エクスペリエンス:評価対象の製品に対する顧客の成功体験を可能にする関係性、製品、サービスおよびプログラム。これには特に、顧客が受ける技術サポートやアカウントサポートの体制が含まれる。また、補助的なツール、顧客サポートプログラム(およびその品質)、ユーザーグループの有無、サービス品質保証等も含まれる。
経営:目標や約束の達成に向けた企業の能力。この要素としては、企業が、継続して効果的かつ効率的に事業運営を行う上で必要なスキル、経験、プログラム、システムおよびその他媒体等を含む企業構造の質が含まれる。
ビジョンの完全性
市場の理解:購入者の要望やニーズを理解し、その理解を製品やサービスに反映させるベンダーの能力。高水準のビジョンを示すベンダーは、購入者の要望やニーズに耳を傾け、理解し、また、新たなビジョンを加えて、その要望やニーズを実現し、あるいは上を行くことができる。
マーケティング戦略:明確かつ差別化が図られた企業メッセージを、企業内で継続的に共有し、また、ウェブサイト、広告、顧客プログラムおよびポジショニングステートメントを通して外部に対して発信していること。
販売戦略:事業展開範囲、スキル、専門性、技術、サービスおよび顧客ベースをより幅広く、強固なものにするため、直接販売および間接販売、マーケティング、サービスおよびコミュニケーション関連会社の適切なネットワークを使用した製品販売戦略。
サービス(製品)戦略:現在と将来の課題を明確にしながら、他社との違い、機能性、方法論および機能群に重点を置いた、ベンダーによる製品開発および製品販売のアプローチ。
ビジネスモデル:ベンダーの基本的なビジネス提案における健全性および論理性。
業種/業界戦略:垂直市場を含む、個別の市場区分が抱える特定のニーズを満たすことを目的として、資源、スキルおよびサービスを割り当てるベンダー戦略。
イノベーション:投資、統合、守備的もしくは先制的な行動を目的とした、資源、専門知識もしくは資本の直接的、間接的、補完的、および相乗的な配置。
地理的戦略:いわゆる「ホーム」である自国・地域以外の場所における特有のニーズを満たすことを目的として、直接的に、あるいはパートナー、チャネルおよび関連会社を通し、その地域および市場に合わせた方法で、資源、スキルおよびサービスを割り当てるベンダー戦略。