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来るべきGenAI生産性革命を利用して Microsoftとの関係を見直す

2026年1月13日 - ID G00841877 - 読了時間13分
執筆者:Michael Silver、Joe Mariano、Craig Roth、David Smith
生成AIは、MicrosoftやGoogleなどのベンダーによる生産性スイートに、新たな波を引き起こしつつあります。SPVMリーダーは、市場変革の可能性を活用することを前提に、Microsoftとの契約更新に備える必要があります。

戦略計画の前提条件


生成AIとエージェントの使用は、主流の生産性ツールにとって30年間で初めて真の課題を提起し、2027年までの間に、580億ドル規模の市場を激変させるでしょう。
Microsoft中心の企業は、ほとんどが大幅な増加を予算に計上していないにもかかわらず、2029年まで、MicrosoftのソフトウェアとSaaSに3年ごとに30~50%多く費やすことになるでしょう。

問題の背景


Microsoftは、Microsoft OfficeとMicrosoft 365で生産性市場を支配しており、エンタープライズ向け生産性製品市場で推定88%のシェアを保有しています。1 しかし、CIOや経営陣は、大方がコモディティとみなしている製品のコストの上昇に不満を募らせています。Microsoft中心の企業の多くは、価格の上昇、プログラム割引や裁量による割引の減少、Microsoftの通貨価格調整により、大幅な増加を予算に計上していないにもかかわらず、2029年まで、MicrosoftのソフトウェアとSaaSに3年ごとに30~50%多く費やすことになるとGartnerでは予測しています(「Unlock Negotiated Microsoft Discounts With Strategic Products」、「Cut the Cost of Microsoft 365 License Renewals — Part 1」、 および「Cut the Cost of Microsoft 365 License Renewals - Part 2」を参照)。
ITリーダーは以前からこのフラストレーションに直面してきました。しかし、Microsoft 365から代替製品へ移行することで、正味プラスになるようなビジネスケースを成立させられるかとなると、心許ないのが実状でした。
  • ITリーダーは、混合環境の運用に消極的でした。ユーザープロファイリング、プラットフォームガバナンス、相互運用性やバージョン管理といった問題に関して、従業員の大幅なイネーブルメントやサポートが必要になり、TCOの著しい増加を招くからです。いわゆるベストオブブリード製品同士の限定的な統合も、デジタルフリクションの増大につながります。
  • 全ユーザーをMicrosoft Office以外のソリューションに移行できる企業は、ほとんどありません。機能上の問題や高度な互換性の問題から、少なくとも一部のユーザーにはExcelやWordが必要となり、結果的に製品が混在する環境になります。
  • Microsoftは、生産性スイートをWindows OS、サーバーワークロード用のクライアントアクセスライセンス、ID管理用のEntra ID、エンタープライズ管理/セキュリティ (EMS) ライセンスにバンドルしています。そのため、ビジネスケースでは単純に生産性だけを考慮するわけにいきません。
Gartnerクライアントは、代替案に関心はあるものの、Microsoft 365に縛り付けられているように感じると報告しています。競争によって市場の力学を覆すには、何が必要でしょうか。生成AI(およびエージェンティックAI)は、ベンダーが搭載しつつあるAI機能に基づく新しい機能性を実現し、代替製品の経済性を変えます。長期的には、生成AIによって新しい、より公平な競争の場が成立し、AIファーストの生産性スイート新世代が出現すると予測されます(図1を参照)。
図1:GenAI生産性スイートの進化における3つの波
GenAI features progress from basic add-ons in legacy productivity products to advanced integrations, ultimately becoming central in GenAI-first productivity suites. The value shifts as GenAI moves from supplemental to core functionality.

インパクトの概要


生成AIが生産性スイート市場に与えるインパクト

  • 現在、新しいコンテンツの開発は、白紙の状態から始めるのではなく、生成AIによって膨大な量のコンテンツを取り込み、それらを無数の方法で統合することから始めるケースが増えています。作成者は編集作業を手動で行うことはせず、AIにコンテンツを継続的に書き直させることが頻繁に行われています。
  • Anthropic、Asana、Canva、ClickUp、Context.AI、Google、Grammarly、Microsoft、Notion、OpenAI、Perplexity、Zohoなど、すでに多くのプロバイダーが生成AIサービスを提供しており、企業の生産性スイート予算をめぐって競合が始まっています。生産性スイートとそのアプリは、プロンプトとエージェントで代替できると考える、xAIのようなプロバイダーも存在します。
  • 時間が経つにつれ、多くの新製品に含まれる差別化されたAI機能のほうが、レガシーのドキュメントとの互換性よりも生産性スイートで重要になるとGartnerでは予測しています。レガシーのフォーマットや互換性の重要性が低下するにつれ、参入障壁が低くなり、競争が激化するでしょう。
  • 生成AIのコストやパッケージングは、時間とともに進化する可能性が高く、プロバイダー各社が有償の機能を無償または低コストのティアに移行させる結果、低コストの製品のほうが妥当とみなされるようになる可能性があります。より高コスト・高レベルのティアが出現する可能性もあります。

Microsoftの契約変更が企業の生産性スイートおよびAI計画に及ぼす影響

Microsoftの契約更新に伴うコストの上昇により、一部の企業が他の生産性スイートを再検討する動きを見せています。この動きの背景には、次のような要因があります。
  • 更新サイクルのたびに割引率が低下。
  • 多くのMicrosoft 365コンポーネントの価格が上昇(特に2022年3月と2026年7月)。2
  • 2025年11月1日以降の更新におけるオンライン製品のボリュームディスカウント帯の廃止。
さらに、Microsoftの顧客は、希望するレベルの割引を得るために、必要と思われる以上のものを購入するとともに、数量を減らす柔軟性がなくなるような修正条項のある複数年契約を結ぶことを余儀なくされるケースが多々あります。こうした理由から、企業が市場状況の変化に対応しにくくなっています。

今後の予測


背景

最も厳しい批評家に言わせると、Microsoft Officeの長年にわたる改良の多くは、革命的ではなく進化的なものであり、1994年にOffice 4.3がリリースされて以来、人々の働き方は2025年になっても根本的に変革されていない、ということになるでしょう。
けれども、もしMicrosoft Officeが本当にコモディティであったなら、他の製品に代替するのは簡単で、市場シェアを独占することもなかったはずです。ほとんどのユーザーにとって、より低コストで(または無償で)利用できる適切な代替製品が存在し、過去にも存在していました。にもかかわらず、代替製品の導入に成功したほとんどの企業では、法務部門や財務部門をはじめとする一部のユーザーが、視覚的な再現性(ドキュメントの書式設定やページ設定が変更されないこと)や、Excelの数式やマクロなどを含むMicrosoft製品の完全な機能や互換性を必要としており、それらはMicrosoft製品を使用することによってしか得られないという事実に気付いています。
20年余り前、Linuxおよび(当時の)Sun StarOfficeを急先鋒とするオープンソースソフトウェアが、Microsoftのデスクトップ支配体制に挑みました。Gartnerのエキスパートは、これらの製品の戦略を「十分な互換性」、「より低価格」と要約しています。しかし、「十分な互換性」では足りないことが多く、「より低価格」では納得のいくROIが得られませんでした。そのため、ほとんどの企業で爪痕を残すには至りませんでした。
それから約5年後、GoogleがWorkspaceスイートとChromeOSで競争に参入しました。Googleは、Microsoftに欠けていた機能、すなわちドキュメントコラボレーションに焦点を合わせることで善戦しました。ただし、互換性に問題が生じることもありました。最終的に、Microsoftが十分なコラボレーション機能を追加して、市場シェアの大半を守り抜きました。
Gartnerは当時、移行コストの高さ、コスト削減効果の疑わしさ、混合環境の管理に伴う複雑性の増大を根拠に、代替製品を検討中の企業がプラスのリターンを達成するには、単にツールの費用を節約するだけでなく、人々の働き方を変えることによって新機能からビジネス上の利点を引き出せるようにする必要があると提言しました。
過去においてコストの削減は、Microsoft Officeから移行するための十分な理由にはなり得ませんでした。Microsoftの支配に挑むには、人々の働き方を根本的に変えるような、市場における大きな不連続性が必要でした。その不連続性が、生成AIです。
これまで登場した競合他社の最大の問題は、人々の働き方を変革しなかった(あるいは、大きく変化させなかった)ことだとGartnerは考えています。「十分な互換性」のある「より低価格」な製品では、市場におけるOfficeの地位を脅かすことはできないというのが、Gartnerの長年にわたる見解でした。それよりも、人々の働き方を根本的に変えるような、市場における大きな不連続性が必要だったのでしょう。その不連続性が、生成AIです。

何が変化したか

Microsoftは過去30年間にわたり、永続ライセンスの不定期的な購入から、継続的なメンテナンスへ、さらにOffice 365とその後のMicrosoft 365 E3やE5などのサブスクリプションモデルへと、企業を体系的に移行させてきました。この進化によって、企業のMicrosoft製品に対する依存度と全体的な支出額が、どちらも大幅に増大しました。より多くの製品を含む大規模なバンドルを次々と購入するにつれて価値は高まりましたが、この年月の間に、一般的な年間支出額は約6倍に増加しました (図2参照)。1994年にはデバイスあたり年間約50ドル(2025年の実質ドル換算で110ドル)だったのが、2025年にはユーザーあたり年間700ドル近くになっています。31シートあたりのコストが増加したので、パーセンテージがわずかに上昇するだけでも予算に大きく影響します。そのため、更新の交渉に際しては、より厳しい精査が必要になります。
図2:Microsoftデスクトップ製品に対する一般的な年間1シートあたりの支出額(1994~2025年)
Annual per-seat spending on Microsoft desktop products rises steadily from about $100 in 1994 to over $700 in 2025, as offerings expand from basic licenses to include security, compliance, analytics, and telephony features.
Microsoft契約の更新コストの増加に直面している企業では最近、代替の生産性製品を求める動きが再燃していることをGartnerのエキスパートが確認しています。多くの場合、コストの増加率は3年ごとに30~50%であり、しかも機能面での大幅な向上を伴わないことが少なくありません。
代替の生産性製品が成功する可能性が以前と比べて高いと言える、主な違いが2つあります。
  • すべてのユーザーにフル機能の生成AI製品を提供することを検討している企業は、経済性が変化したことに気付いています。デフォルトで全ユーザーにGeminiが提供されるGoogle Workspaceなら、すべてのM365ユーザー向けにMicrosoft 365 Copilotを追加購入する費用と比べると、大幅なコスト削減の可能性があります。この経済的な優位性は、一部の企業におけるGoogle Workspaceへの移行を正当化する十分な説得力があることが証明されつつあります。
  • 私たちは今、生産性スイートにおけるGenAI革命の瀬戸際にいます。AIには、これらのソリューションを全面的に改革する可能性があります。大量のボタンやメニュー項目がある雑然としたユーザーインターフェイスは、時代遅れになるかもしれません。長く煩雑でミスを起こしやすい数式やマクロは、自動的に作成・管理されるようになるでしょう。さまざまな種類のコンテンツ、AIエージェント、プロンプトを含む新しいドキュメントタイプが、これらを効率的に保存、管理、検索するための新しいフォーマットとともに出現する可能性があります。
こうした進歩はすべて、MicrosoftがOfficeで得ていた競争上の優位性を侵食するものです。
もちろん、Microsoftは価格競争にすばやく対応し、ナンバーワンの立場での経済方程式をリセットすると考えられます。すでにMicrosoftは、以下の調整を行っています。4
  • Microsoftは、以前は有料のM365サブスクリプションを必要としていた機能であるCopilot Chatを、Microsoft 365 Appsに統合しました。
  • Microsoftは、Copilot for Sales、Copilot for Service、Copilot for Finance(いずれもMicrosoft 365 Enterpriseの30ドルに加え、PUPMあたり20ドルを必要とする機能)が、2025年10月1日からは追加料金なしで含まれるようになると発表しました。
  • 2025年12月1日から教育機関の顧客向けにMicrosoft 365 Copilotの価格が40%引き下げられ、PUPMあたり30ドルから18ドルになります。
現在これらの製品に当初の価格を支払っている顧客は、Microsoftのアカウントチームから何らかの譲歩を得られる可能性がありますが、プログラム上、前払い金を取り返すことができないため、 次回の契約更新時に製品コストを現物に合わせて忘れずに修正する必要があります。割引と引き換えに削減不可の修正条項を受け入れたIT SPVMリーダーは、契約の満了まで交渉済みの価格を支払うことになります。
Microsoftは、高い価格で重要な複数年契約を結んだ顧客を立腹させることなく、価格競争に対処するという難局に直面しています。
来るべきGenAI生産性スイート革命は、企業とMicrosoftの双方にとって、対応するのが一層難しいものになるでしょう。ベンダー各社が新しいイノベーションで地位を争い、持続可能な競争優位性を生み出すための新たなロックイン要因を模索するからです。Microsoftにとって、この状況はイノベーターのジレンマを具現しています。Officeの優位性と収益を脅かす可能性のある、根本的に異なる機能セットや収益化モデルを備えたAIファーストの生産性製品に対し、Microsoftはどこまで果敢に競争するでしょうか?

アクション

  • 新しい製品を積極的に試したい従業員のために、イノベーションを促進しガバナンスを維持することで、新世代の個人向け生産性スイートに備えます。開発状況を監視し、新たなスタンダードの進化を追跡します。
  • 市場の不確実性を活用し、Microsoftとの契約に割引と柔軟性を組み込む方向で交渉します。業績が悪化した場合、事業売却が発生した場合、生成AI製品の価格や機能が変更された場合、または他のAI製品への切り替えを決定した場合を想定して、長期契約による割引が保護策として不十分であれば、契約期間を短縮します。

注意点

  • 企業が自社の真の優先事項や意図を明らかにすると、Microsoftや他のベンダーとの交渉における優位性を失うことになります。
  • 効果的なコラボレーションを妨げ、デジタル従業員エクスペリエンスを低下させる、寄せ集めのツール群を採用してしまうリスクがあります。
  • 買収された製品や、廃止予定の製品を導入すると、コストの増大、戦略変更の必要性、ツールからのIPの抽出や移行の難しさを招く可能性があります。廃止されたプラットフォームから重要な情報を移動、保持、保護するための手段を確保する必要があります。

根拠


1 Productivity Suites Revenue Breakout, Worldwide, 2023. 生産性スイートの収益の内訳:記載されている市場収益の88%は、SaaSおよび従来のオンプレミスソフトウェアの両方について、ベンダーから報告または提供された数値ではなく、価値と使用状況に関するGartnerの推定値を表しています。この中には、コンシューマー(非ビジネス)収益は含まれていません。
Gartnerは、有用な市場規模と製品比較を提供するため、オフィススイートの収益をそれぞれの市場に分割しています。ベンダーは、コンポーネントレベルでの収益を報告していません。しかし、影響を受ける市場の総市場規模を報告するとともに、独立系プレーヤーに対するMicrosoftおよびGoogleの相対的な強みを比較するためにも、推定による配分が必要です。(たとえば、Google DriveとDropboxの比較、コンテンツサービスプラットフォームとしてのMicrosoft SharePointとOpenTextのコンテンツサービスとの比較など。)
収益の内訳は、アナリストによる顧客への聞き取り調査に基づいています。Microsoft 365の場合、コンポーネントの使用状況に関する調査からの追加情報も加味されています。Google Workspaceの場合、収益はオフィススイートとコンテンツコラボレーションプラットフォーム(Google Driveコンポーネント分)に分割されます。Microsoft Office製品とMicrosoft 365の収益は、使用状況の評価に基づいて6つのカテゴリーに分割されます。
3 顧客への聞き取り調査で入手した過去のコストと使用状況の追跡に基づきます。
4 Microsoftは2025年9月10日、PUPMあたり20ドルで、かつPUPMあたり30ドルのM365 Copilotライセンスが必要だったCopilot for Sales、Copilot for Service、Copilot for Financeが、2025年10月1日以降、追加料金なしでM365 Copilotに含まれるようになると発表しました。 「Moving sales, service, and finance to the frontier with Microsoft 365 Copilot」, Microsoft 365 Blog.
2025年10月15日、Microsoftは2025年12月1日より、教育機関がM365 Copilotサブスクリプションを元の価格から40%割引のPUPMあたり18.00ドルで購入できるようになると発表しました。「New AI experiences and academic offering for Microsoft 365 Copilot」, Microsoft Education ブログ。
Microsoftは2025年8月、以前は有料のM365 Copilotサブスクリプションを必要としていた機能であるCopilot Chatを、Microsoft 365 Appsで利用可能にしました。「Copilot in apps for work」, Microsoft 365 Copilot。
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